爆豪と緑谷のグラウンド・βでの闘い(13巻117話〜14巻121話まで)を私闘とする

🟧爆豪が抱える苦しさ

何が爆豪を私闘に至らせたか

私闘に至った理由についてオールマイトは相澤に「爆豪少年は私の引退に負い目を感じていたんだ…」「そのモヤモヤを抱えたまま試験に臨ませ…結果彼の劣等感が爆発した」「気づけずメンタルケアを怠った…大人の失態が招いたケンカだったんだ」(14巻51ページ)と説明する

元々爆豪はオールマイトの引退に負い目を感じており、加えて仮免試験によって劣等感が爆発し、私闘に至った、という説明である

OFAの話を伏せる必要といった事情もあるため仔細な説明にはなっていないが、大意はこれで間違いないだろう

以下、前半のオールマイトに対する負い目と後半の劣等感の爆発の2軸に分けて見ていく

◆ 1.自分の弱さのせいでオールマイトを終わらせてしまったという負い目

「何で俺はっ」「俺は…オールマイトを終わらせちまってんだ」「俺が強くて敵に攫われなんかしなけりゃあんな事になってなかった!」(13巻179ページ〜180ページ)と爆豪自身が語るように、爆豪は林間合宿の際敵に攫われることがないほどの強さがあればオールマイトを終わらせることはなかった、と考えている

(1)妥当性

オールマイトの引退は必ずしも爆豪の弱さに起因するものだったと言えるものでは無い

オールマイト自身が「これは君のせいじゃない」「どのみち限界は近かった…こうなる事は決まっていたよ」(14巻41ページ)と語るように、オールマイトがAFOとの戦いによって力を使い切り引退となったのはオールマイトが自身の意思で緑谷に”個性”を譲渡したから、というのも大きな理由としてあるし、AFOがあのような形で攻撃を仕掛けたから、というのもある

また、爆豪は「自分が攫われたから」というが、そもそも敵連合のような攫う側がいたからこそ起きたことであるとも言える

爆豪が攫われた点に着目するならば、攫わせてしまったという視点から原因を求めることも可能となる

実際、緑谷は「あの時僕は戦うことを選択し腕を壊した」「壊さなければ…かっちゃんを奪え返せたかもしれない」「奪い返せていればオールマイトはオール・フォー・ワンと戦っていなかったかもしれない」「あの時洸汰くんを保護し相澤先生の下へ」「駆けられていれば!」「脚を中心に使って鍛える」「もう少し早く辿り着くべきだった」「人を救けるにはまず自分が無事でいなきゃ…!」(12巻118ページ〜119ページ)と、考えており、自分の至らなさが爆豪を攫われ、オールマイトとAFOを戦わせることに繋がったかもしれない、と考えている

「爆豪が攫われたから」という視点で考えるにしても「敵に攫われてしまうほど弱い(その場で敵に対応できるほどの強さがない)から」という点ではなく「敵に「こいつなら揺さぶりをかければヒーローから敵側に落ちるのではないか」と思われるような精神の不安定/未熟さ」に視点を持っていくことも、会見で記者の発言を聞き、実際死柄木から誘いをかけられた爆豪からすれば充分可能な見方である

恐らくこのような視点があるため、爆豪の「何で俺はオールマイトを終わらせてしまってるんだ」という語りに対し、因果関係が薄く、また本来もっと省みる必要がある点からの論点ずらしに陥っている、自意識が過剰であったり自分が他者に影響を強く与えることができるという傲慢さからこそ本来背負う必要がないことを背負うことになっているという批判がしばしば見られる

では爆豪のこの自責は傲慢さや自意識過剰なものであったり的を外したものなのだろうか

(1)-1 爆豪視点での情報

オールマイトは爆豪が攫われるかどうかに関わらずデクに既に”個性”を譲渡しており、また、AFOとの戦いに至るまでにも力を使ったりしており、”個性”がなくなることで従来通りのヒーロー活動が行えなくなることは時間の問題であった

この”個性”の譲渡は明確にオールマイトの意志によって行われたものである